にきび治療最前線皮膚科処方の最新にきび治療薬からにきび治療掲示板まで。大人のニキビに悩んでいた医師がニキビに悩む全ての患者にエールを送る池袋のニキビ治療専門外来医のブログ。※左下の興味あるカテゴリーから入ると便利です
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タバコはにきびに悪いんですか?というような質問を患者さんから時々受けます。食べ物もそうですが、タバコとにきびの関係は医学的には証明されていません。それどころか、タバコを吸っている人は吸っていない人に比べてにきびが少ないという報告のほうが多く目立ちます。今回今年4月に発表された論文を一つ紹介します。
「Severe Acne Vulgaris and Tobacco Smoking in Young Men.」 J Invest Dermatol. 2006 Apr 27 若い男性における重症にきびとタバコの関係についての論文です。27083人の男性を調べた試験で、27083人中タバコを吸う人は43%、タバコを吸わない人は57%でした。タバコを吸う人の中で重症にきびの方は0.7%、タバコを吸わない方で重症にきびの方は1.0%と、タバコを吸う人のほうが吸わない人よりもにきびがひどい人は少なかったという結果になっています。受動喫煙や、にきびに対してどんな治療をしているか等は考慮しておらず、単純にタバコを吸う人、吸わない人の中で、にきびがひどい人がどれくらいいるかを調べた論文です。 この論文に対する私の意見です。 この論文の他にも、タバコはにきびを悪化させないという結果の論文をいくつか読んだことがあります。ニコチンが炎症を抑える作用があるとも言われています。私としても、タバコはにきびを悪化させるものではないと思っています。ただ、もともとにきびがひどい人は健康に気を使い、タバコを吸わない人が多いため、それが結果に反映されてしまったのかも知れません。タバコ自体は健康に害があることは100%その通りなのですから、私としてはタバコを決して勧めることはしませんし、にきびを悪化させないとしても、患者さんには止めるように指導していきます。(特に女性の方でホルモン治療を受けられる方はタバコにより、血栓症の危険が高まります) にきび治療最前線へ SAHA症候群というものがあります。SAHAとは、Seborrhoea, Acne, Hirsutism and Alopecia の頭文字をとったものです。日本語訳では、脂漏(脂肌)、にきび、体毛が濃い、頭髪が薄い、となります。いずれも男性ホルモンの作用が亢進して起こる症状です。
SAHA症候群の原因として 1) 卵巣に問題がある(多嚢胞性卵巣症候群など) 2) 副腎に問題がある 3) プロラクチンの分泌が多い 4) 原因不明(特に見つかる病気は存在しない) の4つに分かれます。 このSAHA症候群の診断は男性ホルモン、プロラクチン等を計測し、高ければ超音波検査等を行います。主に婦人科で検査を行うことができます。 SAHA症候群のように、男性ホルモン作用が亢進している症状を呈している場合のにきびには、抗男性ホルモンが非常に有効です。 ホルモン治療の効果についての問い合わせが多いため、1つ文献を紹介します。
[Treatment of acne with an antiandrogen containing contraceptive] Borgyogy Venerol Sz. 1988 Jun;64(3):125-30. Related Articles, Links 18人の平均年齢21歳の女性に低用量ホルモン剤(当院で使用しているダイアン)を使用し、12ヶ月間観察した試験です。18人中14人が治癒、残り4人が改善しました。再発は7人に見られましたが、治療を始める前の状態に戻ったひとはいなく、治療前よりも良い状態でした。再発を認めた患者には、さらに12ヶ月を超えての投与がなされています。 この論文に対する私の意見です。 この論文では100%の患者に効果を認めています。ダイアンに関しては、今まで3つの大きな試験がなされており、3つをあわせると、延べ2000人以上のニキビ患者が試験に参加しています。おおよそ6ヶ月の投与で70%の改善率、9ヶ月で80%、12ヶ月で90%となっています。当院では、ダイアンの他にも他のホルモン剤や、スピロノラクトンなどの抗アンドロゲン剤、アダパレン、アゼライン酸等、確実にニキビに効果のある薬剤を使用、併用していきますので、さらに改善率のアップが望めると考えています。 にきび治療最前線へ 2005年に発表されたスピロノラクトン(男性ホルモンの受容体をブロックする作用をもつ薬)のニキビに対する効果についての論文「Effects and side-effects of spironolactone therapy in women with acne」を紹介します。
28人の女性(平均年齢21歳)のニキビ患者にスピロノラクトンを投与した結果、24人(86%)に著明な改善が認められました。残りの4人は全く改善しないという結果でした。28人以外に、副作用で服用を中止しなければならなかった患者は、2人でした。 私のスピロノラクトンに対する評価は、スピロノラクトンはざ瘡に対して著明な効果を示しますが、再発率は高いという印象を持っています。ですからニキビが治癒、又は寛解後の治療、スキンケアが大切になっていきます。スピロノラクトン単独で治療することも多いのですが、やはり一番効果的なのは、他のホルモン療法や、局所療法と併用することでしょう。効く人には劇的に効果がありますが、効かない人には全く効果がなく、効く効かないが2つにきっかりと分かれるのも不思議なところです。 にきび治療最前線へ にきびを消毒する薬が市販されているのをよく見かけます。ピンポイントににきびに付けられるようになっているものもあります。また、一般の傷消毒薬(マキロン)をにきびに塗っている患者にも会ったことがあります。消毒をすれば、アクネ菌が死滅し、にきびが早く治るのではないかと思っている方が多いのですが、実は消毒は百害あって一利なしなのです。
消毒薬は細胞傷害性といって、雑菌を含む生きた細胞を傷害する作用があります。人間の皮膚も生きた細胞で作られているわけですから、消毒によって皮膚は痛めつけられ、皮膚炎を起こしたり、ひどい場合は潰瘍になってしまう場合もあります。にきびに使用すれば、にきび痕になったり、色素沈着を起こす可能性があります。 皮膚を念入りに消毒しても、1時間後には消毒前の雑菌だらけの状態に戻っていることが報告されています。「傷を消毒する」ことは医学的に無意味であるだけではなく、傷の治癒を遅らせ、人によってはアレルギー反応を引き起こしたり、白血球やマクロファージなどの免疫細胞を死滅させることで、かえって感染を助長させる可能性もあるということがわかっています。傷は消毒しないということは、すでに医学的常識になっています。にきびの消毒にも同様のことが言えると考えています。 当院の方針として、にきび患者が消毒薬を使用しないように注意しています。きれいに治すためにも、消毒薬はおすすめできません。 にきび治療最前線へ アゼライン酸のにきびへの効果について以下の論文があるので紹介します。
「Azelaic acid 15% gel in the treatment of acne vulgaris. Combined results of two double-blind clinical comparative studies」:J Dtsch Dermatol Ges. 2004 Oct;2(10):841-7 15%アゼライン酸を使用した群で、炎症性のにきびが平均で70%減少しています。副作用としてアゼライン酸は、benzoyl peroxideよりも著明に刺激性が低く、抗生剤(クリンダマイシン)より刺激性は高かったとの結果になっています。 この論文に関しての私の意見です。 アゼライン酸は、男性ホルモンから活性型男性ホルモンに変換する酵素を強力に阻害します。炎症性にきびで、抗生剤に抵抗性であったり、 benzoyl peroxideで赤みを生じてしまう患者には、アゼライン酸が治療選択のひとつに十分なると思っています。 にきび治療最前線へ アダパレンはトレチノイン外用の一種です。諸外国ではしみ、しわ、にきびへの治療に用いられていますが、indian journal of Dermatology 2003に「Safety and efficacy of adapalene gel 0.1% in acne vulgaris」「アダパレンのにきびに対する効果と安全性」という論文が掲載されています。
この論文ではにきび患者571人を対象とした試験で、12週間の治療期間で、96.3%の患者が、治療を開始する前より改善しました。18%の患者が完全ににきびが消失、44%の患者が著明に改善したとの結果になっています。副作用に関しては、ほてりやひりひり感が23%、乾燥が16%、他に痒み、赤み等認められましたが、いずれも重篤なものではありませんでした。 この論文に対する私の意見です。 アダパレンは、レチノイン酸に比べ、副作用はマイルドであり、効果は同程度だと謳われていましたが、この論文でそれが証明されたと思います。レチノイン酸は、活性がすぐに失われてしまうのに対し(保管方法、製品にもよりますが、早ければ数週間で効果がなくなってしまう場合があります)アダパレンは室温での保存が可能であり、化学的安定性もレチノイン酸より数段優れているようです。難点は、レチノイン酸よりも高価である点でしょうか(大体価格は3倍程)。 にきび治療最前線へ 2005年9月に発表された論文
Trends in prescription of acne medication in the US: Shift from antibiotic to non-antibiotic treatment.J Dermatolog Treat. 2005 Sep;16(4):224-8. に、アメリカで行われているにきび治療のトレンドについて書かれています。1990年から2002年にアメリカでにきびのために処方された薬を調査したところ、benzoyl peroxideやクリンダマイシン、テトラサイクリン、エリスロマイシン等の抗生物質や、殺菌剤は処方されなくなってきており、レチノイン酸、イソトレチノイン内服の処方が著明に増加しているという結果となっていました。著者は抗生物質に多剤耐性のプロピオニバクテリウム属(P.acnes等のにきびの原因菌)の増加に対する注意が、処方にあらわれているのではないかと推測しています。 この記事に対する私の意見です。以前より述べているように、抗生剤のにきび治療に対する評価は低いです。1つは耐性菌が生まれ、難治性になる場合があること、もう一つは正常の細菌叢まで壊してしまい、肌本来の機能を失うからです。にきびの原因とされているプロピオニバクテリウム属は、皮膚の常在菌です。抗生物質でこの菌を全て殺すことはできるのでしょうか?(おそらくできません。)残った菌は、抗生物質に耐性を獲得し、さらに増殖します。そうすると同じ抗生物質が効かなくなり、新しい抗生剤を使用し、また同じことが起こります。結局多剤耐性菌が残り、難治性のにきびを引き起こすことになりかねません。また、皮膚の常在菌であるプロピオニバクテリウム属は、みなさんの皮膚に常在しています。それにもかかわらずにきびがある人と、ない人がいます。単に殺菌するだけでにきびを治すというのは無理があると思います。 にきび治療最前線へ 多嚢胞性卵巣症候群は、10人〜15人に1人という割と頻度の高い病気で、排卵しづらくなるせいで月経不順や不妊症を引き起こします。男性ホルモンが活発化し、にきびがひどくなる、毛深くなる、肥満になる(原因ははっきりわかっていません)等の症状がでます。血液検査、超音波検査等で診断できますので、生理不順、肥満等ある方は、にきび外来を受診される前に婦人科にて診察を受けられることをお勧めします。多嚢胞性卵巣症候群と診断されても、当院での治療(ホルモン療法も含めて)は受けられますのでご安心下さい。
にきび治療最前線へ イギリスのデータベースから、1987年〜2002年にニキビと診断された15-35歳の患者約85000人のデータを解析したところ、ニキビの治療で抗生物質を6週間以上にわたり使用した人は、抗生物質を使用していないニキビ患者に比べて、上気道感染症に2.15倍もかかりやすいという結果となりました「Over 6-week antibiotic acne treatment raises risk of upper respiratory tract infection Arch Dermatol. 2005; 141:1132-1136」
この論文に対する私の意見です。 ニキビ治療に抗生物質を使用する意味は、主にニキビの原因の一つであるアクネ菌(P.acnes)を殺すためです。私は、かねてからにきび治療に対する抗生物質の使用に疑問を持っていました。私自身のにきびに全く効果がなかったためでもあります。抗生物質を使えば、それだけ耐性菌(抗生物質に抵抗力のある菌)が出てくることは明らかです。アクネ菌は皮膚の常在菌なので、だれの皮膚にでもいます。全てそれを死滅させることは果たして可能なのでしょうか? 生き残った菌が繁殖して、さらに強い菌となる可能性もあります。皮膚には他の常在菌もたくさんいて、アクネ菌を増殖させないようにする菌もいます。それらの常在菌も殺してしまうこととなりますし、上に挙げた論文のように、他の感染症に対しても逆に弱くなってしまうのではと危惧しています。 抗生物質の使用に全く反対というわけではありません。抗菌作用のほかに、抗炎症作用(炎症を静める作用)等を期待して、私も診療に使用します。ニキビだけでなく他の疾患に対しても、最も多く使用する薬剤の一つです。ですが、今の日本の現状では、抗生物質を乱用しすぎているといっても過言でないと思います。 にきび治療最前線へ 元グラスゴー大学の学生11232人を対象にした疫学調査で、若い頃ににきびがあった男性は、にきびがない男性に比べて、死亡率、特に冠動脈疾患(心臓病)で亡くなる率が低いことがわかりました。逆に、にきびがあった男性は、ない男性に比べて前立腺癌の危険が増加しました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=15937017&query_hl=2 この論文に対する私の意見です。 若い頃の男性ホルモン作用が前立腺癌の危険を上げ、逆に心臓死の危険を下げるのでしょうか?確かに男性ホルモンはにきびを悪化させ、前立腺癌も悪化させます。ですが、にきびのある男性は、ない人に比べて男性ホルモンが高いということはなく(女性の場合と異なります)、いささかその説は疑問に思います。にきびがある男性は、ない男性に比べて、喫煙率が低かったとのことなので、心臓死を含む死亡率が低いというのは、タバコを吸う人が単に少なかったことが原因なのかもしれません。 にきび治療最前線へ にきび治療薬として最も効果があるとされるイソトレチノイン内服製剤(アキュテイン等)の副作用として、気分が落ち込みうつ状態になる、ひどい場合は自殺願望が出るとの報告がありましたが、「Isotretinoin therapy and mood changes in adolescents with moderate to severe acne: a cohort study」※Arch Dermatol. 2005 May;141(5):557-60での試験では、うつとイソトレチノイン内服との関係は否定されています。この試験では12歳−19歳の132人を対象とし、59人にイソトレチノイン内服、73人は抗生剤等の従来の治療を行い、「うつスコア」にて数ヶ月間の観察を行っています。その結果、イソトレチノイン内服はうつ症状を上昇させる危険はなく、逆に軽快させる作用がある可能性があるという結果になりました。文献→http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=pubmed&dopt=Abstract&list_uids=15897376&query_hl=19
この文献への私の意見としては、基本的には賛成です。ニキビがあるということだけで、落ち込む人は沢山います。さらに、その他のことが引き金となって、自殺する人もいると思います。ですが、イソトレチノインによってにきびが治ると、それだけで明るくなる人がいてもおかしくありません。ただ、ニキビができる年頃は自殺が多い年頃でもあるので、なんともいえないのも事実です。 私としては、アキュテインの副作用としてうつ症状が出るということを前提にして(それが正しくないとしても)、注意深く扱うに越したことはないと思っています。 にきび治療最前線へ | ||||